セカンドオピニオン事例4 乳癌「手術をしたくない!」
38歳 女性
乳癌と確定診断されています。彼女の希望は手術しないで治したい。できれば漢方薬で治したいという相談です。画像診断と病理所見から間違いなく乳癌です。先方の病院は素晴らしい病院で、「漢方で治したい」といった西洋医学からみればわがままな患者さんの希望に添って、丁寧に詳細な紹介状と画像診断が詰まったCDを持たせてくれました。
僕のコメントは以下です。
「先方の病院は素晴らしい病院ですね。こんなに詳細な紹介状と検査のCDがあります。さて、手術をしたくないのですね。その気持ちよくわかります。同じような希望をされる患者さん、たくさん僕に会いに来ますよ。そこで僕はいつも同じ話をするのです。華岡青洲を知っていますか。江戸時代中期から後期の名漢方医です。彼のことは有吉佐和子さんの『華岡青洲の妻』で本にもなっていますし、舞台にもなっています。彼は乳癌を漢方で治せないから、奥さんとお母さんを実験台にして、1804年に世界初と言われる全身麻酔を行いました。そして乳癌を切除したのです。漢方だけで治るのであれば華岡青洲は全身麻酔を敢えて開発しませんよね。漢方だけで乳癌の治療は無理なのです。その後、乳癌は手術が進歩し、薬物療法と放射線治療も加わり、本当に長生き出来るがんになったのですよ。エビデンスがある治療は是非受けて下さいね。エビデンスとは、その治療をするかしないで、明らかに結果に差があることです。絶対に行った方が御利益があると思われていることは是非やってください。明らかなエビデンスがなくて、いろいろな治療を勧められれば、その時にまた相談に来て下さい。漢方薬は応援部隊としては効果があると思っている医師もいます。僕もそう思っています。漢方は保険も効くので、金銭的負担もほとんどありません。今日、漢方薬は出しますが、あくまでも応援部隊ですよ。エビデンスがある治療は是非受けて下さいね。」
こんな話をして、今までに西洋医学的治療を拒んだ方はほとんどいません。エビデンスがない治療で大切なことは、副作用がほとんどなく、金銭的に安価のことです。この2点を外れると、お金儲けのための医療との境が不透明になります。金銭的に安ければお金儲けという観点は存在しません。そんな治療は少しでも御利益を求める人は選択したほうがいいと思います。