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私たちのセカンドオピニオンの目的

これから行われるであろう治療や、行われている治療、すでに行われた治療が、不完全で不確実である医療の中でも十分理に叶っているものか、それとも論外なものであるかを正しく伝えることです。僕の経験では9割の医療機関では理に適っている治療が行われているので、多くはそんな事情を説明して安心を担保する役割と思っています。

次章からは私が考えるセカンドオピニオンの定義について解説します。(文責 新見正則)

●狭義のセカンドオピニオンと広義のセカンドオピニオン

世の中のセカンドオピニオンの定義は概して、これから行われるであろう治療に関して第三者の意見を聞くといったものが多いのです。これを狭義のセカンドオピニオンと呼ぶことにしましょう。

しかし、セカンドオピニオンのパイオニアとして長くセカンドオピニオンに携わっていると、患者さんの要望が、狭義のセカンドオピニオンではなく、現状に対するいろいろな医療・健康相談という側面も少なからずあります。そんな全ての医療相談を含めたセカンドオピニオンを広義のセカンドオピニオンと呼ぶことにします。

そんな観点から今までの広義のセカンドオピニオンを眺め、これからのセカンドオピニオンに思いを馳せるとセカンドオピニオンは4つに分類できます。セカンドオピニオン1.0、2.0、3.0そして4.0です。

●セカンドオピニオン1.0  黎明期 2000年〜

セカンドオピニオン1.0は、僕が日本で初めて保険適用のセカンドオピニオン外来を大学病院で始めた2000年からと言えましょう。この当時はセカンドオピニオンという言葉もまったく知られていませんでした。

僕は、欧米では当然と考えられていたセカンドオピニオンを本邦にも普及させようと思ったのです。当時は主治医以外の意見を聞くことは御法度といった空気が医療界に流れていました。そんな御法度という旧態依然としたシステムを少々風通しの良いものにしようと思って始めたのです。

まったくセカンドオピニオン外来がない状態からセカンドオピニオンを始めた時代がセカンドオピニオン1.0です。つまりセカンドオピニオンの黎明期です。

●セカンドオピニオン2.0  浸透期 2005年〜

最初はセカンドオピニオン外来を始めた頃は、「そんな時間ばかり取られて、お金にならない制度が普及する訳がない」とよく言われました。しかし、お金にはならなくても「セカンドオピニオン外来は一流病院の証」という風潮を創ればいいと思い、メディアで普及啓発に努めたのです。

すると、2005年頃から続々とセカンドオピニオン外来が誕生し始めました。僕の思い描いたように、セカンドオピニオンがない病院は二流以下というイメージが定着し、それぞれの病院がセカンドオピニオン外来を持つようになりました。

すると、患者さんが他の病院でのセカンドオピニオンを希望しても、セカンドオピニオンを行っている病院が、他院でのセカンドオピニオンを断ることができなくなったのです。

本当にセカンドオピニオンの普及には好循環が働いたと思っています。しかし、この段階ではそれぞれの病院が各自勝手にそれぞれのセカンドオピニオンを行っているという段階で、病院間での医療情報を共有するシステムや相互ネットワークはありません。セカンドオピニオンの浸透期です。

●セカンドオピニオン3.0  相互連携の時代 2015年〜

セカンドオピニオン3.0は2015年頃からとぼつぼつと始まっていると思っています。医療情報の共有化の時代です。

以前はCT、MRT、血管造影などの画像データを病院同士が共有することは難しかったのですが、現在はCDなどにデータをダウンロードしてセカンドオピニオン用に提供することは当然の医療行為になりました。

しかし、そのデータのやりとりはまだダウンロードされたファイルを患者さんが持参するという段階です。これだけインターネットが普及していますが、医療情報はインターネットで共有化するまでには至っていません。

ブロックチェーン(分散型台帳技術)の応用が進むと、データの改ざんなどの心配もなくなるので、複数の医療機関での検査結果やカルテなども患者情報として、患者さんの了解のもとにどの医療機関でも閲覧できるようになることが理想です。

患者さんの医療情報が共有化できれば、セカンドオピニオンというハードルも極めて低いものになります。 日本全国がひとつの病院システムのように機能するはずです。そうなると、それぞれの医者が患者の治療に関して簡単に迅速にコメントできるようになります。そんな多様な意見を患者さんが知って、自分に最適と思う治療を選べばいいのです。セカンドオピニオン情報の相互連携の時代です。

●セカンドオピニオン4.0 人工知能登場 2025年〜

セカンドオピニオン4.0は患者さんのデータを共有化できた次に登場するものです。

データが共有化され、そして人工知能(AI)の進歩がこれに加わると、人工知能が最適な治療を提示する世界が訪れます。人工知能がセカンドオピニオンを行うようになるのです。2025年頃から広く始まるのではと期待しています。そんな世界は素晴らしいと思いませんか。

人工知能が世界中の文献を読み、世界中の臨床試験を拾い上げ、世界中の症例報告やガイドラインを網羅すれば、医者個人の集合体で行っていた治療の時代よりも遙かに健康に御利益がある治療を選び出せるはずです。しかし、その時代はもう少し先なのです。

この段階のセカンドオピニオンでは残念ながら人の幸せを考慮できないと憂慮しています。人工知能が導いた治療を患者レベルで解釈する医師の存在がまだ必要に思えます。さらなる将来は人間の幸福感までも組み込むことができる高度な人工知能が活躍すれば、セカンドオピニオンをすべて人工知能にお任せできる時代になるでしょう。

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●セカンドオピニオン0.0

一方でセカンドオピニオンを行わずに、自分が信頼している医師や病院にすべてお任せするというのも決して間違ってはいません。

そんなセカンドオピニオンを行わない方法を敢えてセカンドオピニオン0.0とここでは呼びます。セカンドオピニオンを行わなくても、その医師やその病院が、今後行うであろう治療と、それ以外の治療、またはまったく治療を行わないと言った選択肢を熟慮していれば、それが自己完結型のセカンドオピニオンを加味した診療になっているのです。

そんな医師や病院から出された治療方針は素晴らしいもので、敢えて外部でセカンドオピニオンを行う必要もありません。また患者さんや家族も将来の潔い逝き方(死に方)を考えることも大切と思っています。

元気な時に、世間話のように死に方を語っておくのです。そうすれば敢えてセカンドオピニオンを求める必要もないかもしれません。患者サイドのセカンドオピニオン0.0です。