がんの検査

がんは悪性腫瘍です。自立性に増殖し、浸潤・転移するものです。自立性に増殖するということは「しこり」になるということです。

小さければ顕微鏡でやっと解る程度です。米粒大、小豆大、ウズラの卵大、鶏の卵大とだんだんと大きくなります。そんな「しこり」をまず見つけることががんを捕まえる第一歩です。 例外は血液のがんでこちらは血液の中で自律増殖します。悪性リンパ腫はリンパ節が「しこり」として触れますが、白血病や骨髄腫ではしこりは触れません。

「しこり」を見つけるためには体を触ることが基本です。乳癌などはしこりとして触診で触れることがあります。体の中のシコリを捉える方法はCTスキャンやMRI、そして超音波検査があります。

●触診

手で触ることによる診察です。こんな原始的な診察も結構役に立ちます。乳がんは患者さんが自分でしこりを触れて受診することも少なくありません。また甲状腺がんや頚部のリンパ腫も自分でしこりを自覚することがあります。医師の診察では腹部の触診で肝臓の腫大や脾臓の腫大、お腹の腫瘤をある程度診断可能です。左鎖骨下リンパ節はウィルヒョーリンパ節と言って、遠隔転移を知るひとつの指標になるリンパ節です。これも触診で触れることができます。肛門から指を入れて、直腸癌が診断可能です。婦人科の内診も指を使って行います。

●超音波検査

超音波検査は魚群探知機の原理です。海の中の魚の群れを超音波で追跡できます。それを応用して体の中を垣間見ることができるのです。魚群探知機の原理ですので、水には強く、空気があると役に立ちません。つまり乳腺、肝臓、胆嚢、心臓、子宮、腎臓、膀胱、筋肉や皮下組織などの検査には向いています。呼吸を司る肺や、オナラを含む大腸、ゲップを含む胃などはあまり上手く描けません。超音波は害がないと言われていますので、妊婦や小児でも特段の問題はありません。むしろ胎児の観察に超音波は頻用されています。難点は撮影技師の腕に依存します。

●CT検査

X線を用いて体の内部情報をコンピューター処理して画像化する検査です。平面の写真が何枚も描き出されるものでしたが、最近は3次元処理も可能になっています。胸やお腹、骨のX線撮影に比べると数百倍被曝しますので、必要な時に行うようにしましょう。年に数回の検査であれば問題ないと言われています。筒状のCTスキャンの器械に入り、ベッドに寝て、そのベッドが動いて撮影するのです。その間息を止めるように指示されます。実際の検査は数分で終了します。 また、造影剤という薬を血液内に注入すると血液にコントラストが付いて造影剤がない単純CT撮影では解らなかった情報が得られることもあります。造影剤は静脈から投与するので点滴が必要です。少々気持ち悪くなることもあります。 CT検査ではX線被爆しますので、不要なCTスキャンは控えた方がいいでしょう。妊娠していないかは検査前に確認されます。

●MRI検査

こちらは被爆するX線は使用しません。MRIは核磁気共鳴画像のことで、強い磁石と電磁場を利用して体の中を解析し、CTと同様に平面的な多数の画像や、3次元の立体画像を作成可能です。CTとは撮影する理屈が異なりますので、似たような検査ですが、がんが疑われるとCT検査とMRI検査が両方施行されることもあります。

●PET検査

こちらもCTやMRIと似たような器械に入り、似たような画像が得られます。ところがこちらは機能を見ている検査です。一方でCTやMRIは体の中の形態を撮影しています。ぶどう糖を注射すると、がんはぶどう糖を優先的に利用しているので、まずがんに取り込まれるのです。むしろ、PET検査ではぶどう糖を取り込む多くのがんが判別できるのです。ぶどう糖を取り込むという機能を見ているので、形態をみているCTやMRIとは異なるのです。ぶどう糖は脳では唯一のエネルギーで、また尿から排泄されます。よって、がん以外にも脳と腎臓、尿管、膀胱などもPET検査では写ります。全身を一気に撮影することもCTやMRIとは異なります。ぶどう糖を取り込む細胞に目印を付ける検査ということです。

●単純X写真

一方向からX線を当てて撮影する検査で、胸部単純X線検査や腹部単純X線検査が頻用されます。また整形外科では骨の形体を観察するために骨のX線撮影を行います。骨肉腫や、がんの骨転移などもわかります。

●乳腺撮影(マンモグラフィー)

マンモグラフィーとは乳腺専用のX線撮影装置です。乳腺を挟むようにして撮影します。乳がんの初期症状で、かつX線には写りやすい微細な石灰化(骨の様になること)やしこりが解ります。超音波検査とは違うアポローチなので、両方を併用することが多いのです。

●シンチグラフィ

放射線同位元素という物質を体内に投与し、その分布を撮影する検査です。どんな放射性同位元素を使用するかによって、いろいろな形態や機能が検査可能です。がん領域では、骨転移を調べる骨シンチグラフィや甲状腺や副甲状腺を調べる甲状腺シンチグラフィ、副甲状腺シンチグラフィ、そして腫瘍を調べるガリウムシンチグラフィなどがあります。

●腫瘍マーカー

がんの中には、そのがんに特徴的な物質を産生するものもあります。そんな物質を腫瘍マーカーと呼び、血液中の腫瘍マーカーの測定が行われています。しかし、早期診断に有効な腫瘍マーカーはほとんどなく、多くは治療の経過を見るために使用されています。体質的に腫瘍マーカーが高い人もいます。つまりそんな人ではがんがない健康状態なのに腫瘍マーカーが高いということです。時間の経過と腫瘍マーカーの変化を見比べることが大切です。PSAは前立腺がんの検診で使用することもあります。しかし、PSAが高いからと言っても必ずしもがんとは限りません。

●遺伝子検査

最近はある種の抗がん剤が有効な人(レスポンダー)と無効な人(ノンレスポンダー)が遺伝子検査でわかります。これはとても大切な情報で、無効な抗がん剤を使用するという時間と費用のロス、そして体力の消耗などを避けることができます。 また、遺伝的に高率に乳がんや大腸がんなどが発生する遺伝子が判明しています。そんな遺伝子を持っていると解れば、あらかじめ予防的に手術を行うことも考慮されるのです。

howto-01