セカンドオピニオン事例3 大腸癌術後「がんの治療後に元気がない」
72歳 男性
肛門に近い場所に出来た大腸癌のために、直腸の手術が行われ、そして人工肛門になりました。リンパ節転移も多数あったので、それらも切除したためにリンパの戻りが悪く、両下肢が象の足のよう(リンパ浮腫)になっています。本人は生きる楽しみがないと言って、現在の治療のセカンドオピニオンを兼ねて相談に来ました。
僕のコメントは以下です。数回来院して、人間関係が良好に保たれてからの発言です。
「あしのむくみは医療用の弾性包帯と医療用のストッキングで以前よりはよくなりましたね。だんだん良くなって長い時間をかけると昔の足に戻ります。あなたは大きな手術を経験しました。大きな手術をするためには、全身の状態、心臓や肺などなどをしっかりと調べています。ですから不幸にも大病を患いましたが、全身のチェックも同時に済んでいるのです。『無病息災』と昔から言いますが、まったく病気をしない人は、体のチェックをしないので、突然に死亡することもあります。むしろ『一病息災』なのですよ。あなたが、急に死亡することはまずありません。がんの治療も無事に終了しました。手術は臓器を切り取りますので、人工肛門になったり、両足がむくんだり、大変な苦労があると思います。でも、それをこれからも悔やみ続けて行くのですか。折角、命が永らえるたので、そんな体の障害は受け入れて、残りの人生楽しく生きてください。同じ年代で先に天国に逝った人も少なくないでしょう。彼らはもっと生きたくても天国にちょっとお先に行ったのです。あなたは幸いにも天国からのお呼びがまだかからなかったのです。前向きに生きてください。あなたの足は死ぬまで治らないと思った方が吹っ切れますよ。ずっと応援していますからね。」
そんな話をして、死ぬまで治らないと言われて、でも笑顔で診察室を後にしました。今でも時々外来に遊びに来てくれます。治すだけが医療ではないのです。言葉で励ますことも大切な医療と思っています。