セカンドオピニオン事例6 乳癌「良い主治医はどこに」
51歳 乳癌
都内の大きな病院ですでに乳癌の確定診断を受けています。そしてその病院の紹介状を持って、他の病院にもセカンドオピニオンに行っています。そしてその病院宛の紹介状をコピーして、また僕にセカンドオピニオンに来ました。三回目の意見ですからサードオピニオンとも言えます。
僕は、昔はこんな患者さんが嫌いだったのです。でも最近は超現場主義と思って、「なんでご不満なんだろう」と患者さんから情報収集することにしているのです。僕は大学病院、中規模病院、クリニックでの外来、スポーツドクター、産業医などをやっています。いろいろな医師の立場で超現場主義を実践しているのです。
この患者さんがある意味ドクターショッピングをしているのは話しやすい先生に会えていないからなのです。僕のお話は以下です。
「どちらも良い病院ですよ。乳癌の治療に関しては特別問題ないと思います。しかし、あなたが僕の外来でまたセカンドオピニオンに来たのは、今までの先生となんとなくしっくりこないのですね(患者さん頷く)。その直感はとっても大切ですよ。乳癌はその後手術が終わっても、薬物療法や放射線療法の治療を勧められることがあります。そんな時に話しやすい先生でないと、不安や不満が募るのです。ですから、あなたが気に入る先生に会うまで、いろいろな医者を訪ねた方が良いですよ。僕が直接知っている乳癌の専門医を書き出しますね。この医師を訪ねてもいいし、他の医師でも良いですよ。複数の医師を書き出したのは、僕がいいと思って紹介しても実は合わないと言うこともあるのです。
ひとつ付け加えておくと、日本はフリーアクセスで国民皆保険なのです。誰もがどの病院に行くことも可能なのです。その結果、病院は本当に忙しいのです。あなたの訴えに何十分も時間を費やすることはできないのです。ですから、簡潔にあなたの希望を伝える努力をしてくださいね。紙に書き出していくのもいいと思いますよ。他の患者さんもたくさん待っていることを解って下さいね。あなただけの医師ではないのです。そんな控えめな態度であなたの主治医に最適な人を捜し当てて下さい。」
この方は、結局僕が紹介した先輩を主治医に選びました。どの一流病院でもセカンドオピニオン外来があり、セカンドオピニオンが当然という時代、つまりセカンドオピニオン2.0が完成したのです。日本の医療はフリーアクセスですが、それは病院を選べるのであって、実は主治医を選べません。主治医も転勤したり、開業するかもしれません。主治医を探すのも大切ですが、そんな限界も当然にあることを理解してください。