セカンドオピニオン事例5 胃癌「セカンドオピニオンを否定する病院」
62歳 男性
早期の胃癌という確定診断でのセカンドオピニオンです。遠方からの来院です。自宅の近くには手術を行う病院は1件しかなく、そこで胃癌の手術が予定されています。胃を全部切除する手術です。患者さんはセカンドオピニオンを求めたいと主治医に訴えたそうですが、「セカンドオピニオンなど嫌いだ!」と突き放されたそうです。
紹介状がないので、検査後にもらったという胃の内視鏡検査の写真を持参しました。それを見ると確かに早期がんのようです。
以下が僕の説明です。
「先方の病院が胃の早期がんと診断しているのですね。この胃カメラの写真からも僕もそう思います。胃の早期がんはほとんどリンパ節に転移しません。先方が行う予定の手術は胃を全部切除して、場合によっては周囲のリンパ節も一緒に取ってきます。早期がんでリンパ節転移がなければ、胃癌の部分だけをそぎ取る手術で十分な可能性があります。内視鏡的に切除可能かもしれません。胃カメラの延長の手術です。または、腹腔鏡手術と言って、大きくお腹を切らなくても、お腹に複数の穴を開けて、そこからカメラと道具を挿入する手術も可能かもしれません。ともかく、先方での手術は延期にして、胃癌の治療経験が豊富な病院で、ちょっとご自宅からは遠いかもしれませんが、意見を聞いて下さい。」
そんな説明をして、本人は後日、東京の病院で再度検査を受け、胃カメラの延長の手技で表面の胃癌をそぎ取る手術を選択しました。地理的な要素は大切ですが、少しでも不安があるときは経験豊富な病院で診てもらった方がいいでしょう。セカンドオピニオン3.0となって、日本中で患者情報が共有化されると、事前の医療相談での来訪が不要になります。必要な時だけ出向けばよくなるので、遠方の方にも都会と同じレベルの診療が提供できるようになるのです。この病院の医師はセカンドオピニオン0.0の時代の人でした。それも自分のなかにいろいろな選択肢を持てないので、悪い意味でのセカンドオピニオン0.0の遺物です。