セカンドオピニオン事例1 肺癌「安心感を与える補足的説明 ほとんどがこれ」
52歳 女性です。検診で肺癌疑いということで、更なる検査が行われました。そして肺癌の可能性が高いと言われて、動揺しています。
今検査をしている病院の治療方針が決定していませんので、狭義の意味でのセカンドオピニオンではありません。まず、今まで行われた検査の結果で手もとにあるものを拝見しました。
僕の説明は以下です。
「TBLBとは経気管支肺生検の略で、気管支鏡から出される鉗子(ブラシみたいなものです)にてつまんだ組織の検査です。その結果、Adenocarcinomaと確定診断されています。Adenocarcinomaとは腺癌の意味です。そして場所を特定するためにCT検査を行っています。場所は左肺の上葉で、肺の上ということです。がんとは、転移や浸潤する可能性がある腫瘍の総称です。本当にがんの怖さを発揮するのは、転移した場合です。現状の検査では、転移は確認されていないので、まだ悪性の本性を発揮していない状態です。つまり将来、殺人犯になるが、現状はまだ人を殺していない といった意味合いです。現状であれば、つまり転移がなければ、左上葉、つまり肺の左側の上を切除する手術が行われると思います。転移がなければ手術で終了、もしもリンパ節転移があれば、現在は抗がん剤が相当効くので、手術後に抗がん剤治療になるかと思います。
まず、他に転移がないかの検査を行って、そしてその後治療する病院を選べばいいと思います。数日や数週間の前後で違いはありませんが、数ヶ月待つのはお勧めできません。現状は、人を殺していない、将来殺人犯となる可能性が高い人が見つかったと言うイメージですよ。ある意味、安心して下さい。」
この後、脳のMRI検査、そして骨のシンチグラフィ、PET検査が行われましたが、転移はありませんでした。諸検査を施行したあとの先方の病院の説明書には「セカンドオピニオンを希望する時には情報はいつでも提供する用意がある」との記載がありました。患者さんは、僕のコメントで安心できたようです。そして先方の病院の治療が理に叶っていることも納得できたようです。そしてセカンドオピニオンにも前向きな病院です。こんな病院は素晴らしい病院なのです。多くの医療相談はこのケースに代表されるもので、現状に不安があるので、少しでもそれを和らげたいのです。こんな回答でも患者さんはホッとするのです。もちろんその病院で引き続き治療が行われるでしょう。
がんの可能性があると告げられると誰もが動揺します。そしてがんと確定診断されると益々動揺します。病院サイドも精一杯説明する努力をしますが、ひとつひとつの検査の説明は十分な時間的余裕もなく、すべての検査をまとめて説明することが通常です。この待っている時間が本当に不安なのです。ごく稀に、まったく動じない患者さんもいますが、多くはこの患者さんのように不安感や焦燥感が襲ってきます。そんな時に、「今の治療は理に叶っていますよ」という当たり前の回答でも安心できる材料のひとつになるのです。
検査結果はこの病院のように印刷して手渡してくれるところが増えました。印刷機能がないときなどは、画面にある結果をスマートフォンで撮影すればいいでしょう。手もとにある情報だけでも、相当な説明が可能です。自分の検査結果ですから、可能な限りご自身で集めておくことをお勧めしています。