セカンドオピニオン事例8 膵臓癌「治療方針の変更」

Friendly female doctor hold patient hand

85歳 女性

膵臓癌という診断で、手術が予定されています。CT検査やMRI検査からは強くがんが疑われます。しかし、本人に症状はありません。たまたま他の症状でお腹のCT検査を受けたところ偶然に発見されました。娘さんと息子さんが相談に来られました。

「高齢で元気なので、大きな手術は受けさせたくない」という相談です。先方からの正式なセカンドオピニオンの紹介状はありませんが、画像検査のCDを持参されました。遠隔転移はないようです。手術の説明時に使用されたメモ書きも持参されました。がんが膵管や胆管が十二指腸に開口する部分に近いので、がんの切除に加えて、膵管と胆管、そして十二指腸を繋ぎ変える必要があるのです。膵頭十二指腸切除という手術です。30年前に比べると遙かに安全な手術になりましたが、大きな手術であることは間違いありません。御本人には軽い認知症がある程度で、ほぼ年齢相応にお元気だそうです。

僕は以下のようにお話ししました。

「僕の母であれば、手術はしないと思います。先方の病院はこの難しい手術の件数も多く、病院と医師の技量にはまったく問題ないと思います。しかし、手術の説明書にあるように術後の合併症がゼロではなく、またある程度臥床が続くと、軽い認知症が一気に進む可能性があります。ご家族に手術に対する一抹の不安があるのであれば、手術を延期してはどうですか。また、看護婦さんに医者のいないところで、『あなたの家族であれば手術しますか』と聞いてご覧なさい。また外科の先生に同じ質問を投げてもいいですよ。」

そして、手術は結局選択しませんでした。看護婦さんに尋ねたところ、「家族なら手術はしない」と言われたそうです。看護婦さんは手術後の状態も知っていますから、そんな情報も大切です。

この患者さんは数年後に膵臓癌ではなく、心臓の病気で亡くなりました。大往生だったそうです。死ぬまで軽い認知症だけで元気に暮らしたそうです。がんは結局悪さをしませんでした。

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